
「トップダウン方式 サンスクリット学習法 理論編 その3」
理論編1では前置きを、理論編2では実際に具体的な方策に触れてみました。その続きです。
改めて、読解、ここでは具体的にギーターが「読める」のに必要な要素を挙げますと、
1.文字が判別できること。
2.単語の切れ目がわかること。
3.連声が識別できること。
4.個々の単語の文法構造が識別できること。
5.個々の単語の意味がわかること。
6.個々の単語の文法構造を基に、全体の意味が理解できること。
でした。理論編2では、3番めまでを解説し、現時点で文字が読め、単語の切れ目がわかり、また連声が識別できる段階に達しました。次は4番目の「個々の単語の文法構造が識別できること」です。
別項で触れましたように、サンスクリットという言語は、「屈折語」に分類される言語で、それぞれの単語が複雑に変化をします。その「変化」を割り出す作業がこの4番目です。
つまり、例えば「私」という名詞なら、それが「私は」を表しているのか、「私を」「私に」「私の」・・・を表しているのかを特定する作業です。
これも別項で触れましたが、サンスクリットには、名詞なら「数(すう)」が3種類、「格」が8種類あり、名詞ひとつとっても24通りもの変化があります。動詞もまた、例えば英語に「現在形」「過去形」「未来系」「過去完了」・・・などなどあったように、ひとつの動詞がこれまた英語以上に複雑に変化をします。
実際には、初学の段階ではある単語の品詞すら見分けにくいですので、まずはじめに、その単語が名詞なのか、動詞なのかなど、品詞を見分けること、そしてその単語の変化形を見分けること、の2段構えの読み方が必要になってきますね。
次は、5番目「個々の単語の意味がわかること」です。
上のように、個々の単語の文法構造がわかるようになってはじめて、その単語が辞書で引ける段階に到達します。
しかし、ここにも実は経るべき段階があって、4番目で見分けた、単語の変化形の元の形、つまり英語でも習ったところの「原形」がわからないと、辞書が引けないのですね。
例えば英語でも、文中に「enjoying」とあったとして、これを辞書で調べても、おそらく意味は出ていないでしょう。「原形」の「enjoy」で調べないといけないわけです。これは簡単な例ですが、サンスクリットの変化は複雑ですので、原形の割り出しが比較的難しい場合が多々あります。
そして、これらを経て、ようやくひとつの単語を辞書で引けるようになったわけです。そしてこの繰り返しで、一つ一つの単語の意味を調べていくことになります。
最後が、6番目「個々の単語の文法構造を基に、全体の意味が理解できること。」です。5番目まででそれぞれの単語の意味がわかりました。最後はそれらを、全体の意味が通るように読み取ってあげる作業です。
「屈折語」であるサンスクリットは、ひとつの単語が、例えば名詞なら「〜は」「〜を」まで意味しているので、どの単語をどの場所に置いても、全体の意味があまり変わらず、語順が比較的自由な言葉なのです。これは、もともと屈折語であった英語が、その特徴を失うと共に、語順で意味を作っていくようになったことと対照的です。
サンスクリットの文章は、文学に限らず、音のリズムを非常に尊びますので、音を整えるために、語順が自由という特性を活かして、意味的な語順よりも、リズムの方を重視するようなところがあります。
ですので、英語のように「文型」などというものを学ぶ必要がない代わりに、自由な語順で並べてある単語を、パズルのように意味を探っていく作業をする必要があるわけです。
この難易度は、読む文章の種類によっても違ってきます。例えば『パンチャタントラ」や「ヒトーパデーシャ」などの物語文学などは、比較的普通に読める流れとなっています。初等教材の例文にこれらの引用が多いのも、これが理由でしょう。
また、反対に、修辞に技巧を凝らした文学などは、この全体の意味をとることが読解への最大のカギと言える、意味のつながりを探ることが難解なものもあります。
さて、こうして、6段階を経て、ひとつの文の意味がわかりました。後はその繰り返しで、2文目、3文目と、どんどん全体の意味を読み取っていくわけです。
初めのうちは、辞書を調べ調べ、変化形を調べ調べ、ですので、意味の採り方もゆっくりになり、英語の読解に慣れない段階でやったように、「後ろから前に返って」などの読み方をしていくのが自然ですが、慣れたら、頭から読んで行って、全体の意味がわかるようになるのが理想とは言えます。
こうして、長々と理屈を述べてきましたが、後は、この効率を重視しつつ、学習に継ぐ学習(笑)、という実践のみです。
この実践に継ぐ実践、独学ではどのように学習を進めたらいいかの方針がまず立たないのが普通と思います。それに、単語ひとつひとつの変化形を調べ、また辞書で意味を調べ、という作業を延々と繰り返せる方は少ないですよね。
そのガイドの役目を果たすのが、このサイト、ということになります。
サンスクリットという言葉は、独学に適した言葉です。会話を想定することがほとんどなく、古典の読解が主ですので、相手はいくらでも辛抱強く待ってくれるわけです(笑)。
ところが、通常の文法書は、ほとんどが独習に適さない内容に思えます。それはなぜかと言いますと、おそらく紙面の都合で、文字、連声、文法事項などの羅列しか書いていない、つまり初学者、独学者にとっては、学ぶべき、身につけるべき「結果」の部分しか書いていないのです。
本来、初学者や独学者にとっては、「学ぶ課程」、「身につける過程」「読解の過程」の「過程」の部分のノウハウが一番知りたく、必要なところのはずなのです。
このサイトでは、紙面の都合を気にせずに済みますので、その「過程」の部分を大いに長々と(笑)公開していく所存です。
解説の文体は、主に語り口調の「講義形式」にしたいと思います。大学受験や資格試験の参考書などでも、読んでいると講義に参加しているような臨場感と、面白さがある、名物講師さんの講義を文字に起こした体裁のものがありますよね。
このサイトも、お読みいただく方が、名物講義に臨席しているような雰囲気の中で、自然に身につけるべき事項を学んでいただいている、という感じにできたらと考えています。
さて、理論編2で、「トップ」に当たる、ギーターの原文を掲げましたが、あなたは現在、どの段階の学習が必要ですか?文字から学ぶ段階?文字は読める段階?
文法を学んでいる段階? などなど、ご自身の段階に合わせて、1〜6までの、現段階で一番必要な部分から重点的に学んでいけば、より「トップ」に速く到達する学習になってくれる方法になります。
「実践編」では、これらの順番に分けて解説をしていくことになります。
since 2007.4.26 All rights reserved.