


現在、「トップダウン方式・サンスクリット学習法」の構築に向けて「バガヴァッド・ギーター」の音声などを毎日少しずつアップしており、ギーター読解を楽しみになさっている方には、少しお待たせしていて申し訳ないですが、もしあなたがこれからサンスクリットに触れる、という方でしたら、ギーターの前におススメしたいことがあります。
それが、現在メールマガジンで解説しているところの、ヨーガの根本聖典「ヨーガ・スートラ」の読解です。
メルマガでは、サンスクリットに全く触れたことのない方でもすんなりお分かりいただけるように、サンスクリットの解説と並行して、ヨーガスートラ本文の解説を進行させています。
これをお読みの方には、「別に、俺はヨーガなんか興味ないよ。」とおっしゃる方もいらっしゃるかと思います。でも、そんな方にも、ぜひともヨーガスートラの読解、ひいてはメルマガのご購読(と言っても無料なのですが(笑)をおススメいたします。
では、なぜそのヨーガスートラなのかと言いますと、すでにマガジンでは解説したのですが、本文に動詞が出てこないので、比較的ラクに読み進めることができる。ということです。
サンスクリットという言語は、名詞の格変化や動詞の活用が非常に複雑で、サンスクリットの学習に挫折してしまう方は、ほとんどがこの複雑さの前に屈服(?)してしまわれた方ではないでしょうか。ところがこのヨーガスートラは、本文が名詞の羅列に近い形で進行していくという特異な文で、動詞の学習の前の段階の方、まだあまり学習に深く手を染めていない方でも、サンスクリットを読む、ということはこういうことなのか、とご実感いただくにはもってこいなのです。
これは「トップダウン方式・サンスクリット学習法」のひとつとも言えますが、短い文をひとつひとつ読んでいく中で、名詞の繋がりである連声(れんじょう)、また名詞の格変化、と言った学習事項を身につけていくことができるのです。
また、発音に関しても、ヨーガスートラ本文には、サンスクリットの単音の発音が網羅されていて、本文に出てこない音は、「jha」という音だけ、また他の普通の文にもあまり登場しない母音だけですので、ヨーガスートラ全体を発音しながら学べば、いつの間にかサンスクリットの発音が自然に身についている、という内容にもなっています。
さらに、サンスクリット学習、という点以外でも、おススメできる点があります。
サンスクリットを学びたい、という方の動機は、おそらくインドの思想、哲学を知りたい、であったり、「ギーター」が読みたい、であったり、また仏典を読んでみたい、などであるかと思います。
ヨーガ哲学、というのはインド六派哲学のうちのひとつで、それ以外でも、インドの哲学や思想は、「瞑想」を離れては成り立たない文化だと思いますので、ヨーガを、例え思想として学ぶとしても、インドの文化、思想を知るのにヨーガを知る、ということは、ほとんど絶対条件でもある、と言っても過言ではないのです。これは学びたいことが仏教であっても全く変わりません。仏教にしてからが、瞑想を主体として成り立った宗教ですし、日本の禅も、大本はヨーガの用語なのです。
まとめますと、
サンスクリット学習の観点から
・初学者のテキストとして、動詞が出てこないという点で取り付きやすく、本文を学んでいるうちに、自然に発音、連声、名詞の変化、などに親しむことができる。
また、サンスクリット学習、という点を離れても、
・インドの哲学、思想を知るのに、ヨーガの知識は欠かせない。
という点を挙げることができます。
メルマガは、こうした点も鑑みて、読み進むうちに自然にサンスクリットの名詞変化や連声、また発音に慣れていただけるような解説をしています。
ギーター解説の構築まで、もう少し時間がかかりますが、ギーターに取り掛かる前段階として、まず、ヨーガスートラに触れて、サンスクリットの概要、インド哲学の根本、を学んでみてはいかがですか?
これは自慢ではないですが(?立派な自慢?)サンスクリットと、ヨーガスートラをこのように解りやすく解説したものは、世界でも少ないかと思います。しかもそれが無料で読めるのですから(笑)読まない手はありません(笑)。
冗談ぽくなってしまいましたが、サンスクリット、インド哲学に気軽に、かつ面白く、解りやすく触れてみたい方には、自信を持っておススメさせていただける内容と自負しております。バックナンバーもお気軽にお読みいただけますので、よろしければご覧いただき、お気に入りいただけましたら、ぜひともご登録いただき、お読みいただけますようお願いいたします。
・サンスクリットの発音は、文字のまま読めばよいので、簡単である。(サンスクリットは、表記と発音が全く同じです。例えば英語は、表記と発音が違うものが多いことで悪名が高い(?)ですし、同じインド・ヨーロッパ語族の古典語、ラテン語やギリシア語でも、表記されていないのに母音を長く発音しないといけないものがあったりで、めんどくさいです。その点、サンスクリットはそういった例外がなく、短い母音は短く、長い母音は長く、しっかりと区別して表記されており、その他の文字も表記されている通りに読めばよいので、合理的で、簡単です。)
◇ サンスクリットの名詞の「格」について
日本語では、名詞の存在や所属、方向性などを示す場合、「は」「を」「の」などをつけて文章を作り上げていきます。
例えば「私」なら「私は」「私が」「私を」「私の」「私に」などです。
学校で「がのをにへとからよりでや」とか、呪文のようなものを覚えされられ、すっかり国語が嫌いになった(笑)方も多いでしょう。
このような言語を「膠着語 こうちゃくご」という難しい名前で呼ぶのですが、「膠着」というのは貼り付けることで、要は「私」という名詞は変わらずに、「は」「の」「を」などを外に貼り付けることによって文章を作っていく言語、ということです。
これに対して、サンスクリットが属する「インド・ヨーロッパ語族」または「印欧語族」は、名詞の単語の内部を変化させることによって、その「は」「を」「の」などを表します。
このような言語を、日本語のような「膠着語」に対して「屈折語 くっせつご」と、これまた分かりにくい用語で呼ぶのですが、要は単語の内部で形を変えて、違った意味を表すという意味です。
私たちが長い時間かけて学んだ英語も、実は印欧語族の言語のひとつで、以前は立派にこのような屈折語の特徴を持っていたのです。それが
時代とともに簡略化してしまったのですが、今でも「I 私」などの代名詞
にこの名残があります。
「I my me アイ、マイ、ミー、
you your you ユー、ユア、ユー、
he his him ヒー、ヒズ、ヒム、
she her her シー、ハー、ハー、」
なんて習いませんでしたか?
あれは「I」が「私は」、「my」が「私の」、「me」が「私を」を意味して、その時に「所有格」「目的格」などという言葉も一緒に習ったご記憶がおありの方もいらっしゃるかと思います。
これが屈折語の特徴で、英語は他の部分は簡略してしまいましたが、普通の屈折語は、全ての名詞にわたって、このように変化します。
この「所有格」「目的格」などのひとつひとつを「格 かく」と呼び、またこの形、語尾の違いのことを「格変化」といいます。(サンスクリット、また一般の屈折語では、現在「所有格」「目的格」とは言わず、別の用語があります)
格変化をする言語は、サンスクリットを含め、伝統的にこの変化を覚える方法があり、「アイ、マイ、ミー、ユー、ユア、ユー・・・」もそのひとつです。
私たちは、「アイ、マイ、ミー・・・」と唱えることで、そうとは意識
せずにも、格変化の暗記をしていた、というわけです。
英語には、かつてこの「格」が4種類ありました。ドイツ語を習ったことがおあり方にはお馴染みと思いますが、現在のドイツ語にも4つあります。
サンスクリットには、この「格」が、なんと8つもあります。
ドイツ語の格変化で苦しんだ方には、めまいと吐き気がする(笑)話しかもしれません。
同じ印欧語族で、サンスクリットとも関係が深い、古典語に属するラテン語で6つ、古典ギリシア語でも5つしかありません。
もともと印欧語族の格変化は8つが基本だったのが、時代とともに、
だんだん、格と格が混ざってしまい、減っていく傾向があったのです。
その中で、サンスクリットは、古来の8つの格をいまだに保っている稀有な言語と言えます。
これは、サンスクリットが日常使用される言語というよりも(もちろん、サンスクリットを日常、読み書き話し聞くことができる人は今でも存在します)、雅語として、ある時期に文法事項を規定し、それを規範にしてきたことによります。そのために時代による変化を蒙らずに済んだのです。
(ある時期、というのは紀元前5〜4世紀、パーニニという文法家によってです。日本では縄文時代です。こんな時代から、サンスクリットは現在までほとんど形を変えず、その形態を保っているのです)
「サンスクリット」という名前自体が「完成された、完璧に作られた、高度に精巧に作った、人工の、洗練された言語」などを意味する 「saMskRta サムスクリタ」という単語から来ている言葉なのです。
話しが逸れましたが、要するに、サンスクリットには格が8つあります。
英語の「I」の格変化が単数形「私」で「I my me」、 複数形「私たち」で「we our us」、全部で6つありましたように、格変化には、「格の数(かず)」かける「数(すう)の数(かず)」だけ変化の形があることになります。とするとサンスクリットの変化形の数(かず)はいくつでしょうか?
別項で書きましたように、サンスクリットの「数(すう)」は「単数」「両数」「複数」の3つですから、格の8つとかけて、24、たった一つの名詞に、24もの変化形があることになります。
また、「男性」「女性」「中性」の性で変化の形が違い、同じ性でも語尾の文字によってもまた変化が違います。
変化の形には共通する部分があるものもあり、基本を覚えてしまえばだいたい類推ができるものがほとんどですが、それにしてもこれをある程度見分けられるようになるのはなかなか骨です。
しかし、これが見分けられないと、文の構造を読み解くことが全くできませんので、サンスクリットを読むには絶対に必要な事項なのです。
ずいぶんと脅かしてしまった(?)ようですが、先ほど英語の「I my me アイ、マイ、ミー・・・」を例にとり、このような格変化を持つ言語には、伝統的にその変化を覚える方法がある、と書きましたが、サンスクリットでも同じような覚え方があります。
学習の初めからこの暗唱を実行し、この格変化を覚えてしまうのが理想ですが、「トップダウン方式 サンスクリット学習法」を標榜するこのサイトでは、伝統的な暗唱方法を活用しつつも、「バガヴァッド・ギーター」の実際の文章に触れながら、少しずつ、その概念と実際の変化を実地に覚えていく、という無駄のない方法を並行して、学習を進めて行きたいと思います。
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