「トップダウン方式」で読解への3番目のカギに挙げた「連声」の識別ですが、実は、読解の際に連声を識別するには、連声の規則を知っているだけでは、実際の文章では歯が立たないことがほとんどなのですね。

 これは「理論編」でも少し触れましたが、知っている語彙をある程度増やしていくことで解決することができます。

 なぜかと言いますと、例えば、理論編の例でも挙げた「caiva」、これは「ca」と「eva」から成っています。ですので、これを知っていれば「caiva」とあったら、「ああ、これはcaとevaにわけられるな」とわかるわけですが、

 では例えば他に「caitya」という単語が出てきたとします。ところがこれは「ca」と「etya」に分かれるわけではなく、こちらは「墓」などの意味のひとつの単語なのです。つまり「cai」と出てきたからといって、必ずしも「a」と「e」とに分かれるわけではないわけです

 では、どこでこの分かれる、分かれない、を判断すればよいのかは、実際の読解では手がかりがないのですね。そして、これを解決してくれるのが、ある程度の語彙力、ということになります。

 上の例で言いますと、「caitya」という単語を予め知っていれば、これがひとつの単語だと見当がつくわけです。

 実際には、たとえ「caitya」が「墓」だという意味を知らなくても、ある程度の語彙力を持ち、また読解の訓練を積んで、読解の「勘」を養うことで、単語の切れ目がだいたいわかるようになってきます。

 そしてこの「勘」を養うのが、語彙の学習に加えて、実際的な連声の学習と、またある程度の読解練習、ということになります。

 そして、このサイトではこの「実際的な連声の学習」と「ある程度の読解練習」とを「ギーター」をつかって、まとめて練習します。つまり、このサイトの方法で、(もちろん、このサイトの方法に限らず(笑))、ギーターの読解がある程度進めば、上に挙げたような「勘」が働く下準備ができたことになると言えます。

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Changed at 2008/05/28(水) 12:34

  ◇ サンスクリットの名詞の「格」について
    
   日本語では、名詞の存在や所属、方向性などを示す場合、「は」「を」「の」などをつけて文章を作り上げていきます。
 
   例えば「私」なら「私は」「私が」「私を」「私の」「私に」などです。
  学校で「がのをにへとからよりでや」とか、呪文のようなものを覚えされられ、すっかり国語が嫌いになった(笑)方も多いでしょう。
   
    このような言語を「膠着語 こうちゃくご」という難しい名前で呼ぶのですが、「膠着」というのは貼り付けることで、要は「私」という名詞は変わらずに、「は」「の」「を」などを外に貼り付けることによって文章を作っていく言語、ということです。
   
    これに対して、サンスクリットが属する「インド・ヨーロッパ語族」または「印欧語族」は、名詞の単語の内部を変化させることによって、その「は」「を」「の」などを表します
   
    このような言語を、日本語のような「膠着語」に対して「屈折語 くっせつご」と、これまた分かりにくい用語で呼ぶのですが、要は単語の内部で形を変えて、違った意味を表すという意味です。
   
    私たちが長い時間かけて学んだ英語も、実は印欧語族の言語のひとつ以前は立派にこのような屈折語の特徴を持っていたのです。それが
  時代とともに簡略化してしまったのですが、今でも「I 私」などの代名詞
  にこの名残があります

   
    「I my me     アイ、マイ、ミー、
      you your you  ユー、ユア、ユー、
      he his him   ヒー、ヒズ、ヒム、
      she her her    シー、ハー、ハー、」
   
    なんて習いませんでしたか?
   
    あれは「I」が「私は」、「my」が「私の」、「me」が「私を」を意味して、その時に「所有格」「目的格」などという言葉も一緒に習ったご記憶がおありの方もいらっしゃるかと思います。
   
    これが屈折語の特徴で、英語は他の部分は簡略してしまいましたが、普通の屈折語は、全ての名詞にわたって、このように変化します
 
    この「所有格」「目的格」などのひとつひとつを「格 かく」と呼び、またこの形、語尾の違いのことを「格変化」といいます。(サンスクリット、また一般の屈折語では、現在「所有格」「目的格」とは言わず、別の用語があります)
 
   格変化をする言語は、サンスクリットを含め、伝統的にこの変化を覚える方法があり、「アイ、マイ、ミー、ユー、ユア、ユー・・・」もそのひとつです。
 
   私たちは、「アイ、マイ、ミー・・・」と唱えることで、そうとは意識
  せずにも、格変化の暗記をしていた、というわけです。

    英語には、かつてこの「格」が4種類ありました。ドイツ語を習ったことがおあり方にはお馴染みと思いますが、現在のドイツ語にも4つあります。
   
    サンスクリットには、この「格」が、なんと8つもあります
  ドイツ語の格変化で苦しんだ方には、めまいと吐き気がする(笑)話しかもしれません。
   
    同じ印欧語族で、サンスクリットとも関係が深い、古典語に属するラテン語で6つ、古典ギリシア語でも5つしかありません。
   
    もともと印欧語族の格変化は8つが基本だったのが、時代とともに、
  だんだん、格と格が混ざってしまい、減っていく傾向があったのです。
   
    その中で、サンスクリットは、古来の8つの格をいまだに保っている稀有な言語と言えます。
 
   これは、サンスクリットが日常使用される言語というよりも(もちろん、サンスクリットを日常、読み書き話し聞くことができる人は今でも存在します)、雅語として、ある時期に文法事項を規定し、それを規範にしてきたことによります。そのために時代による変化を蒙らずに済んだのです。
 
  (ある時期、というのは紀元前5〜4世紀、パーニニという文法家によってです。日本では縄文時代です。こんな時代から、サンスクリットは現在までほとんど形を変えず、その形態を保っているのです)
   
    「サンスクリット」という名前自体が「完成された、完璧に作られた、高度に精巧に作った、人工の、洗練された言語」などを意味する 「saMskRta サムスクリタ」という単語から来ている言葉なのです。
   
    話しが逸れましたが、要するに、サンスクリットには格が8つあります。
   
    英語の「I」の格変化が単数形「私」で「I my me」、 複数形「私たち」で「we our us」、全部で6つありましたように、格変化には、「格の数(かず)」かける「数(すう)の数(かず)」だけ変化の形があることになります。とするとサンスクリットの変化形の数(かず)はいくつでしょうか?
    
    別項で書きましたように、サンスクリットの「数(すう)」は「単数」「両数」「複数」の3つですから、格の8つとかけて、24、たった一つの名詞に、24もの変化形があることになります
 
    また、「男性」「女性」「中性」の性で変化の形が違い、同じ性でも語尾の文字によってもまた変化が違います。
   
    変化の形には共通する部分があるものもあり、基本を覚えてしまえばだいたい類推ができるものがほとんどですが、それにしてもこれをある程度見分けられるようになるのはなかなか骨です。
   
    しかし、これが見分けられないと、文の構造を読み解くことが全くできませんので、サンスクリットを読むには絶対に必要な事項なのです。  

    ずいぶんと脅かしてしまった(?)ようですが、先ほど英語の「I my me アイ、マイ、ミー・・・」を例にとり、このような格変化を持つ言語には、伝統的にその変化を覚える方法がある、と書きましたが、サンスクリットでも同じような覚え方があります。
  
   学習の初めからこの暗唱を実行し、この格変化を覚えてしまうのが理想ですが、「トップダウン方式 サンスクリット学習法」を標榜するこのサイトでは、伝統的な暗唱方法を活用しつつも、「バガヴァッド・ギーター」の実際の文章に触れながら、少しずつ、その概念と実際の変化を実地に覚えていく、という無駄のない方法を並行して、学習を進めて行きたいと思います。

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Changed at 2007/06/21(木) 13:12

      ◇名詞の「数(すう)」「性(せい)」について
     
   サンスクリットは「インド・ヨーロッパ語族」または「印欧語族」という一定の共通点を持った言語群のうちのひとつに分類されています。
 
   なぜ距離的に遠くのヨーロッパとインドの言葉が同じ語族に入るかといいますと、民族の移動に伴って、それを話す人々が広がったからです。
  現在の研究ではまだ特定ができていませんが、現在これらの言語を話す人々は、遠い過去のある時、ある地域で、共通の言葉を話す祖先を持っていた、と考えられています。
 
   ヨーロッパの古典ギリシア語などと、この地理的に遠く離れたインドのサンスクリットに共通点を見出した時から、近代の「比較言語学」という学問が発達するのですが、それはさておき、この印欧語の特徴として、名詞が「格」「数」「性」を持つ、というものがあります。
 
   ◇「性(せい)」
   
   「性」というのは、名詞ひとつひとつが、男性、女性という性格の別を持つことで、サンスクリットにはこの他に「中性」という性を加えて、3種類の性があります。
 
   大本の発想は、古代の人々が世界の事物を、人間に男性と女性があるように、物事を男性、女性、またどちらにも属さないもの、という風に分類を
  していったのが初めだと思います。
   ただ、これらは現代の我々の発想から見て、見かけの性別に結びつかない  場合があり、単語ひとつひとつについて、「これは男性名詞」 「これは女性名詞」…と、ひとつひとつ覚えるしかないのです。
 
   しかし、話す場合と、書く場合との、自分から発する場合なら区別がつかないと話し、書くことができませんが、サンスクリットを学ぶ方法は読むことが主体の方がほとんどと思いますので、出てきた単語の格や数が  特定さえできれば、あまり「性」を意識する必要はない、とも言えます。
   
    また、読む分においては、単語の末尾や、変化の形から推定できる場合もありますので、それほど頭を悩まされる項目ではないと思います。
    
   ◇「数(すう)」
 
  「数」というのは習慣上「すう」と読みます。これは数(かず)のことです。英語でも、「単数形」「複数形」の違いがありましたね。
 
   英語の場合は、ひとつの場合が「単数形」、二つ以上をまとめて 「複数形」で表しましたが、サンスクリットには、この他に、 「両数(りょうすう)形」または「双数(そうすう)形」というものがあり、これは二つのものを表す時に使います。
 
   例えば、「両手」や「両眼」など、元々二つのものをペアで表すとき、また相対する軍隊など、他にも普通に二つのものを表すときには、全てこの「両数形」を使います
 
   ですので、サンスクリットでは、「単数」「両数」「複数」という、ひとつのもの、二つのもの、三つ以上のもの、を全て違った形で表現します。
 その形の違いも、英語の複数形のように「s」をつけるだけ、などという生易しいものではなく(笑)、単語の末尾が一見複雑に変化します。
 
   例えば、「手」を意味する男性名詞「 hasta ハスタ 」で見ますと、まだ解説していませんが、「手は、手が」を意味する「主格」で、
  単数形が「 hastaH ハスタハ 」
  両数形が「 hastau ハスタウ 」
  複数形が「 hastaaH ハスターハ 」 と語尾が全く違った形になるのです。
 
   以上のように、サンスクリットの「数」には、「単数」「両数」「複数」の3通りがあることになります。
 
   ◇「格(かく)」
 
  「格」については、少し長くなりますので、別項で書きたいと思います。
   

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Changed at 2007/06/21(木) 13:14
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